Life and Dance in Latino Style

ラテン音楽、スペイン語圏のラテン音楽とダンス。サルサ、レゲトン、バチャータ、メレンゲ等。中南米関連。ラテンファッション。スペイン語。その他の音楽関連

ウィーンでは国立美術館にテクノクラブがある

風営法に関連して、オーストリア(欧州)のクラブとダンス状況について話します。

欧州のクラブカルチャーで世界的に有名なのは、ロンドン、ラブパレードがあったドイツのベルリン、スペインのイビザ島などですが、実は地味にオーストリアにもあります。


オーストリアといえば、ワルツとモーツアルトとハプスブルグ時代の宮殿とサウンドオブミュージック。


首都ウィーンの王宮、そのそばにある国立近代美術館。


その 国立美術館内ではクラブがあって毎週末テクノイベントをやってます。



うそ??? って思った人、

ウィーンの国立近代美術館 MUSEUM QUATERのオフィシャルサイトを見てください。
http://www.mqw.at/en/program/detail/?event_id=7636&page=6&filter_keyword_ids=16

そこではいろんなアートのジャンルが分類分けされていて、演劇・音楽・「ダンス」のカテゴリーがありますよね、そこにちゃんとこのクラブイベントが入っています。
そこに何日にどういうイベントやるかっていう日程が書いてあります(たとえばイギリスからテクノDJがきてプレイするとか)。

cafe leopold wien


Cafe Leopoldといって、Leopoldはクリムトなどがある美術館のメインギャラリーの名前です。
昼間はカフェで夜はクラブになります。ウィーンはテクノが人気なのでテクノ多いけど、ヒップホップ系など違うジャンルのイベントもやってるようです。
美術館の出店の一つが勝手にイベントやってるわけじゃないですよ。国立美術館内なんで閉館後の夜に秘密で営業するわけにいかないでしょ。
美術館内の公式ポスターやイベント告知をはってある告知板にはこのクラブイベントの告知もあります。私がこの美術館のインフォメーションセンターでこのクラブイベントについてたずねてみたら、詳細に教えてくれました。

ウイーンっ子の友達たちからも、ウィーンのテクノのクラブ行きたいなら美術館内のクラブに土曜日に行ったほうがいいとすすめられました。彼らは深夜に遊びに行くクラブと認識してたんです。


この美術館はオーストリアやウィーンが誇る国立近代美術館で、海外からの観光客もたくさん訪れる観光名所です。王宮や国立美術館(伝統美術)の前にあります。
ギャラリーには世界に有名なオーストリアを代表する画家のクリムトエゴン・シーレの絵が飾られ、オープンエアのカフェでお茶したりおしゃれなレストランでランチしたり、広場では若者たちが歓談してる。子供たちのスペースもある。
ウィーンの観光名所でありウィーン市民の憩いと文化交流の場。
私のウィーンでのお気に入りスポットです。

近代美術館 (ミュージアム クオーター MQ)ってこんなおしゃれなところ



この近代美術館は、オーストリアのモダンカルチャーの発信基地です。
たとえば私が行ったときには美術館の広場でファッションショーやってたし、若いアーティストの作品が外に展示されてました。
絵も工芸もファッションも音楽もダンスもクラブカルチャーもアートとしてカテゴライズされて国が推進してる。それがみんなMIXすることによって、また新しいものが生み出されていくんですね。



さて、そのクラブの映像を見せます。

Cafe Leopoldでのイベントの映像

これは今年の3月のイベント






びっくりしたでしょう?
国立美術館内で夜こんなことやってるんだから。
DJ入ってるわ、照明も暗いし、みんな酒飲んでがんがんかかるテクノやハウスミュージックで踊る踊る。。。

他の国でも、国立美術館で、しかも夜間に、毎週末、お酒出してテクノ踊らせるなんて考えられないでしょう。
日本なら、普通のバーやクラブでも「今踊らせてましたね」って警官数十人に手入れされて逮捕されちゃうよ。
ちなみにこの国立美術館のウィンターパーティでは、外でラップ歌手の大型コンサートやってました。




オーストリアはこれだけじゃないよ☆

ウィーンに次ぐオーストリアの第二の都市グラーツに行ったときは、グラーツ出身のオーストリア人の友達からおもしろいクラブを見せてもらいました。

グラーツのシンボルで一番の観光名所といえばShlossberg。山の上にあるお城で13世紀からの時計台があり展望台からグラーツが一望できる市のシンボル。グラーツは歴史的建物が美しい落ちついた都市です。

shloss berg

このshlossbergの写真を見ると山の上にありますよね。この城の下に洞窟があるのですが、そこになんとイベントホールがあり週末の深夜はテクノなどのイベントやってるんですよ!

地元の人たちは「クラブ」って言ってて、土曜日にそこにテクノ踊りに行こうって友達から誘われました。


その名も 「Dom Im Berg」。
グラーツ市の公式観光案内でもshlossbergとともに紹介されてました。


ここで去年の5月にひらかれたイベントのビデオ。
このイベントのビデオにshlossbergの城や展望台などがうつってるのわかりますか?
ビデオの静止画にもあるようにエロい衣装のダンサーもいれば、車いすで踊ってる客もいる。




同じ場所での「I love Ibiza」っていうイベントのビデオ(イビザはスペインにあるクラブだらけのパーティアイランドなんで、このイベントもちょっとミーハーな感じ)。テレビ局の取材番組です。




Dom Im Bergであったテクノイベント




オーストリアが誇る歴史遺産で毎週末の深夜こんなに踊ってるなんて驚きでしょう?




さらにさらに。。。

ウィーンでは毎年6月ごろ、大規模なオープンエアの3日間の野外音楽イベントがひらかれます。
Donauinselfest (Donube Island Festival)。

ウィーン内にあるDonauinselというドナウ河の中州みたいなある島で開催されます。
そこはウィーン市民の憩いの場で日光浴や散歩、サイクリングや水泳などを楽しんだりするところで、私も遊びに行きました。

そのフェスティバルは、オープンエア(野外)のイベントとしてはヨーロッパで最大級。
なんと300万人の人が国内外から来ます。

川沿い6.5kmにわたって何十もの会場が並び、そこで音楽イベントやクラブイベントやるんです。
ウィーンフィルのクラシック演奏からロックやテクノまで。

夜はダンスミュージックイベントが多くて、深夜にテクノファンが踊りまくります。
ウィーンっ子の友達たちは音楽のライブの話はまったくしてなくて、私には夜はテクノのパーティが野外でたくさんあって欧州中からたくさんの人が踊りにやって来るからおもしろいよっていってたので、どっちかというと彼らにとっては大規模RAVE PARTYのようにとらえてるようでした。


このイベントでのテクノライブの様子のビデオ。
日本のテクノファンにも有名なテクノDJのPaul Van Dyk 







(数年前に事故で中止になった)世界的に有名なベルリンのテクノフェスティバルのラブパレードが100万人なので、300万人といえばその3倍。
どのくらいたくさんの人がウィーンのフェスティバルに来るかわかるよね。
以前は200万だったので増えてるみたい。
新聞社やラジオ局やMTVという有名メディアが後援し、各大企業がスポンサーについています。

日本政府は将来的には多くの外国人観光客を呼びたいと「YOKOSO JAPAN」というキャンペーンを大金かけてやってるけど、ウィーンなんて1回の音楽(テクノ)イベントで300万人来ちゃうよん。

これを読んでる人の中にもオーストリアに遊びに行ってみたくなった人いるでしょう?



★クラブカルチャーが国の観光資源に

今までウィーンの美術館内クラブ、城でのクラブ、オープンエアの音楽・ダンスフェスティバルの3つを紹介しましたが、どれもオーストリアが国家として(またはウィーンなどが市として)、海外に観光名所としても紹介しています。
オーストリアはこれ以外にもいろんなイベントやってるし、オペラや宮殿などの歴史遺産だけではなくてクラブカルチャーも国の大きな観光資源になってますよね。
オーストリアではモダンアートやクラブカルチャーも進化していってるそう。


日本の風営法のダンス規制やクラブ取り締まりから、ほかの国のクラブやダンスはどうだったっけって考えてたら、オーストリアのことをふと思い出しました
オーストリアにいたときは、別に国立美術館でのクラブイベントとかを「びっくり」とか「特別」とは思いませんでした。街の人たちも普通に話してたし、自分もノーマルなこととして自然に受け入れてたんで 忘れてました。

でも 今の日本の悲惨な状況からかえりみたら、オーストリアって実はすごかったんじゃん
ってうらやましくなった・・・



★住民への騒音対策

じゃ日本の風営法みたいのはオーストリアにはなくて、音楽やクラブが野放しなのか、というとそんなことはありません。
住民の暮らしを守るための騒音対策規制はすごく厳しいです。

なんと「10時以降の騒音禁止」という法律があります。
夜10時以降は、個人宅でもがんがん音楽かけてきいたり、ピアノひいたり、大音量でテレビかけるのでも禁止。近所の人から通報されて警察が来ます。
ウィーンの住宅街では、ウィーンはクラシック音楽学生が多いので昼間はピアノなどがうるさいですが夜になるとぱたっととまって静かになりました。
ここまで厳しい法律を持った国はあまりないと思います。

ところが観光客が多い都市の中心部や繁華街などにはクラブやライブハウスがあちこちにありました。あ、タンゴクラブやサルサバーもありましたよ。
10時以降の騒音禁止というのはたぶん基本的に住宅街エリアでのルールなんでしょうね。
しかも移民が多い街や治安があまりよくないエリアの住宅街は週末の深夜うるさいところもあり、アパートの間のクラブやバーや店の前で明け方まで騒いでる人達はいました。でも深夜うるさくて眠れなくても住民は文句言ってませんでした。

ウィーンは、観光客エリアや繁華街⇔閑静な住宅街、治安がいいエリアと治安がよくないエリア、高級エリアとそうじゃないところに分かれてるんで、治安がよくて静かな生活を望む人はそういうエリアを選んで住むのです。
繁華街に住んじゃったらある程度の騒音はしかたがないし、治安が悪いエリアに住めばルールを守らない人がいてもしょうがない、嫌なら引っ越せばいい、みたいなところがあったように思います。



★クラブの年齢層が大人

今までのビデオできづいたかもしれませんが、日本に比べるとクラブの年齢層が高いでしょう。
日本では「30になってもまだクラブ?」って20代前半の若い層が中心になってるけど、ヨーロッパでは客層が30代が中心とか40代や50代がイベントオーガナイザーということもあります。
ちゃんとした仕事を持った30代以上の大人が、週末に友達や恋人と一緒にクラブに遊びに行くのはフツーのことなんで(それにテクノやハウスが一番盛んだったのは90年頭頃だったから、テクノやハウスは若者だけのものではないのよね。)。
オーストリアでは4~50代の人も週末明け方まで踊りにいったりしてましたよ。
大人が多いとお金もおとすので経営も安定するのよね(クラブでお金を使う)。



★イベントやクラブなどのセキュリティ

オーストリアは欧州の中では治安がいい国だと思うし、日本女性の一人旅にもおすすめ。
でも犯罪がないわけではないしどこの国でもテロ対策が強化されたので、ウィーンの中心街などは自動小銃持った警官が各所で警備しています。

300万人くるドナウ河のイベントも国外からの客が来るし人出が多いので、深夜のイベントでは酔っ払いもいます。運営には千人単位のボランティアスタッフを動員し、多数のウィーンの警察が警護にあたっているし、ガラス瓶持ち込み禁止などのルールを定めて安全を守ってるとのことです。



オーストリアの「ペアダンス」

ウィーンといえばワルツ。
いまの12月や1月は舞踏会やオペラの季節です。
デビュタントという社交界デビューの舞踏会(まるでシンデレラ城の世界)などいろんな舞踏会がひらかれます。社交ダンスレッスンをとる人も結構いるし、海外から来て社交ダンスのレッスン受けて舞踏会に出席する人もいます(日本からも来ています)。

そして大晦日のカウントダウンは、ウィーンの市庁舎前でワルツがかかりみんな踊るそうです(マイナス15度の極寒なのに)。

もちろんウィーンでは「ペアダンス」は身につけたほうがいい社会的素養のひとつであって、日本の風営法のように「男女の享楽的雰囲気が過度にわたる」公序良俗を害するもの、と言う人なんか誰もいませんよ!


オーストリアも敗戦国から復興

日本で風営法(ダンス規制)ができたのは終戦直後の昭和23年。
敗戦国としてアメリカの占領下にあった時代ですが、実はオーストリアも日本と同じ敗戦国で10年間アメリカなどの連合国から占領されてました。
オーストリア第一次世界大戦で敗戦し戦争賠償の貧窮に苦しんだことを背景にファシスト党が生まれました。サウンドオブミュージックのトラップ大佐はファシスト党の党員で、ナチスヒトラーオーストリア人。)

ウィーンは空襲で破壊されたので、オペラハウスや大聖堂等の歴史的建造物を戦後再建してあの歴史的町並みを復興しました。
風営法ができた昭和23年の日本と似たような状況だったのに。
なぜ日本だけこんな時代錯誤の法律をつくったのか??
ちなみにオーストリア原発ゼロの国でもあります。

そして21世紀の今、オーストリアと日本のダンスやクラブの状況は両極にあるんですから。。。