「Yo Perreo Sola」Bad Bunny の解説と歌詞和訳
今年流行ったレゲトンのBad Bunnyの「Yo Perreo Sola」の解説と歌詞の和訳をします。
Bad Bunnyは近年世界の年間ヒットチャートのランクのトップの方にいる大人気のレゲトン歌手です。
今年もすでにyoutubeで最も視聴数が多いアーティストの年間ランキングのトップ3に入ってました。
Bad Bunny 「Yo Perreo Sola」
女性の声で始まりますが、その女性歌手はNESIです。
今年の3月にリリースされてすでにyoutubeで今日の時点で4億1千万越えのビュー数。
全米ビルボードではラテン部門で2位。全体では53位。ラテンアメリカ各国でヒットチャートの上位に。
10月にあったビルボードミュージックアワードでも受賞し、ビルボードラテンミュージックアワードではBAD BUNNYはこの曲を含めて7部門受賞。
歌詞の和訳
この曲はスペイン語で、歌詞は和訳してもう一つのブログにUPしました。こちらのリンクを見てください。(著作権上こちらのブログにUPできないため)。
http://diafeliz.jugem.jp/?eid=82
Bad Bunnyはプエルトリコ人なんで、プエルトリコのスラングが結構でてきます。レゲトンはプエルトリコの曲が多いんでプエルトリコのスラング多いので、スペイン語が得意な人でもその辺が難しいかもです。
●歌詞にある”PAPI”は、英語のサイトではDADDYと英語に訳してましたが、DADDYだとお父さん、パパになってしまうんで間違いです。
スペイン語で男性にPAPIというのは親しい男性へのよびかけです。女性に対してはMAMIになります。恋人へのよびかけでも使います。
レゲトンの歌詞にも ”Ay Papi" とかよくでてきますよね。あれも同じです。
●歌詞に出てくる”Amorfoda”はBad Bunnyの曲です。その曲については、以前解説と歌詞和訳しました。
このリンクを見てください。
●歌詞に出てくるNattiはたぶんラテンのレゲトンとか歌ってるNatti Natashaだと思います。ドミニカ人のセクシーな女性歌手。セクシーさを前面に押し出してる人です。
だから歌詞ではNattiみたいにホットな女という表現を使ったのかと私は思いました。
日本でも人気のBecky Gとコラボしたこのレゲトンの曲。このビデオの年上の方の女性がNatti Natashaです。
Bad Bunnyについて
Bad Bunnyはプエルトリコ出身のレゲトン歌手でラテントラップ歌手。レゲトンキングのダディ・ヤンキーに並ぶラテン界のスターです。日本でもファンが多い。26歳だからMalumaと同じ歳で若くして成功した人。ダディ・ヤンキーと親子ほど歳離れているレゲトンの若い世代の代表歌手です。
Bad Bunnyは若手のレゲトン歌手とラテントラップの歌手として急激に人気になりました。いま多分ラテンアメリカの若い子に一番人気の歌手は彼じゃないかと思います。
歌だけじゃなくて、最近は若い世代の子達のインフルエンサーやアイコンになってる感があります。
彼が何か発言が行動するたびにSNSではトレンドのトップにあがります。自宅からインスタで中継しただけで米大陸の若者達が騒いでネットのトレンドランキングにあがるくらい大人気。
この人ぶっ飛んだ事するしやることもめっちゃおもしろいしね。
もっと若い時はちゃらちゃらしてて軽いかんじだったのに。Becky Gの「Mayores」にコラボで参加した時は、Beckyはなんでマチスタの男と一緒にコラボするんだって批判されたのに。でもBad Bunnyは世界で成功するにつれてだんだん変わってきたと思います。特に変わったと私が思ったのは母国のプエルトリコのデモに参加したときから。
今回の歌は社会派ですよ。
曲とビデオの解説
レゲトンのメロディとしてもいいんだけど、非常に社会的なメッセージが色濃い曲とビデオなんです。
しかも男社会で古い体質のレゲトン界を批判するアッパーカットみたいな内容でかっこいい。
「Yo Perreo Sola」はあちこちで曲の解説されてるけど、ラテン的な見方が少なくていまいちだったので、私はラテン的な見方で自分なりに解説します。
ぺレオ(Perreo) とは?
英語圏の人や日本の人はまずこれを理解しとかないと歌の意味がわからないと思います。
それはラテンは男女のペアダンスということです。
私の専門のサルサもバチャータもメレンゲもクンビアもレゲトンもみな男女ペアで踊ります。ラテンのスペイン語のダンスミュージックもです。日本でもラテンのクラブに行くと一人で踊ってなくて、みな男女ペアで踊ってますよ。
レゲトンも男女で踊るんですよ。
日本人は一人や同性の友達とクラブやイベントに来て、1曲ごとに相手をかえて踊ります。男性が女性を踊りに誘いに行って、1曲終わったら次の女性をまた誘う。
でも日本でも南米人ばかりのクラブでは、恋人同士か夫婦か、男女混成のグループ(友達や親族)でクラブにきて、仲間内だけで踊ってます。他のグループの女性や人の女に声かけたらけんかになります。
ラテンアメリカも観光客が多いクラブではなくて(観光客が多いと同性同士で来てナンパもある)、ジモティが多いクラブだと恋人や夫婦か男女グループで来て仲間内だけで踊る事が多いです。
英語圏の音楽メディアは、この歌の「PERREO」の意味がわかってなくてその辺が全く書いてない。
yo perreo solaをググったら日本語の検索結果に、perreoとは? Perreoの意味、というのがでてきました。Perreoはぺレオと読むんだけど、ぺレオの意味がわからないですよね。
私は今までぺレオとは何かについて何度もこのブログに書いてきたんで、ブログの前からの読者は知ってるかもしれませんが。また解説しますね。
ぺレオはレゲトンの踊り方の一種です。
Perreoはperroが元の言葉。スペイン語でperroは犬。男女でレゲトンを踊る時に、女性の背後から男性がエッチのバックみたいにして踊る踊り方、それがぺレオです。犬(perro)の交尾みたいだからperreoっていうんです。
けどラテンは男女ペアなんで、女性ヒップを振って踊ってる後ろから男性がバックスタイルでエッチしてるみたいに踊るのがぺレオですよ。
どういうのか動画でお見せします。
(エロいから子供は見ちゃだめ)
ラテンアメリカではクラブによっては(特に若い子が多いレゲトンのクラブ)イベントでぺレオのコンテストやるところが。優勝したら賞金や賞品出るので、カップルによっては参加する人もいます。(中南米はクラブやディスコに行く時は恋人同士や夫婦、または男女友達グループや親族のグループで行くので。ぺレオ大会に出てる男女はカップル)。
えーー これめっちゃエッチじゃん。エッチしてんのかって思うでしょう。
エロいですよね。
ラテンはやっぱエロイからいつもさかってんのか、って言われそうですが、ラテンでいつもぺレオやってるわけじゃないです。
普通のクラブでぺレオやってたらセキュリティが来て「うちの店はそういう店じゃないから出てけ」と追い出されますがな。日本のクラブよりセキュリティずっと厳しいので。イチャイチャも注意されるのに。
ぺレオはカップルで家でふざけてやったり、ティーンエイジャーが友達同士のフェイスタでふざけてやったり、ちょっと柄悪いクラブでさっきみたいなコンテストでやったりする感じですかね。
私はラテンアメリカでぺレオはまだリアルで1回しか見た事ないです。大きなフェスティバルシーズンで野外コンサートのはじっこで若い子達が酔っ払ってふざけてやったら、まわりが笑いながらとりかこんでみてました。
この曲のミュージックビデオに、途中で男女がペアになって踊るところがあるでしょう。それがぺレオです。男性が背後からくっついて踊ってるシーン。もうわかりますよね。
曲のタイトルの意味
「Yo Perreo Sola」はこのぺレオがわからないと曲を理解できないんですよ。
逆にいうとラテンは男女がカップルで踊る事とぺレオがわかったら曲も半分近くは理解できたといえるでしょう。
曲のタイトル「Yo Perreo Sola」は Yoが私、Perreoはぺレオで踊る、solaが(女性が)一人で、です。
「私は一人でぺレオを踊る」という意味。
あれ、ぺレオって男女で踊るんだよね?
なぜ?
そう、そこなんですよ。
ラテンは男女で踊る。
しかもぺレオは男女のエッチみたいなダンス。
でもこの曲では「彼女はぺレオを一人で踊る」ですよね。
つまり一人でレゲトンを踊ってるだけ。
女性一人だってレゲトンって踊れますよ。
たとえばこういうふうに。
ちなみにいまレゲトンのようなヒップシェイクの踊り方がアメリカ等で流行っていてTwerkっていいます。
Twerkは日本でも知ってる人はいるかも。
youtubeにはtwerkの踊り方のレッスンがたくさんありました。こういうの。
だからレゲトンは女性一人ででも踊れるんです。
だけどラテンのクラブでは普通は男女で踊るでしょう。
しかも日本のラテンのクラブで日本人が多めのクラブでは、女性が一人でレゲトン踊ってると後ろから男がやってきて背後にはりついてくることあるんですよ。
女性によってはやっと誘ってくれたかと思ってノリノリで男性と踊る人もいますが。
せっかく好きな曲かかって気分よく踊ってたら、背後からいきなり知らない男ががばっとはりついてきたらキモイでしょ。そういうときって「触んないでよ、ほっといてよ」って思うじゃないですか。
なかには腰押し付けてくる男もいるし後ろから腕まわされて体あちこち触られるんで、きもいよ、腰押し付けてくんなよって私は思います。
でも特に日本のラテンのクラブに来てるナンパ師のラテン男は、女性が腰ふって踊ってると誘ってると思うし、「彼女一人で踊ってるから誰かと踊りたさそうだぞ。おまえいけ」って仲間を押すんですよね。女が一人で踊っていると「あの女誘ってるな。ものほしそうみたい」と思うんですよ。
でも女性によっては、「一人で踊りたいんだからかまわないでしょ、しっしっ」て思うじゃないですか。もしくは女友達と楽しく踊ってるんだから男は来ないで、って。
まさにそれなんですよ。この「Yo Perreo Sola」の曲。
私は一人でぺレオを踊るんだ。一人でレゲトン踊りたいんだし。別にあんたなんか誘ってないから、男は近寄るな。女友達と盛り上がって気分よく踊ってんだからさ、
っていうのがこの曲タイトルだけじゃなくて歌の内容の意味なんですよ。
ビデオの最後に出てくる文を和訳すると、
「もし女性が君と踊りたくないと言うなら彼女の意思をリスペクトしろ。一人でぺレオを踊りたいんだから。」
です。
社会的メッセージ
この曲は社会的なメッセージが多いです。
1つめはこの曲はコロナ禍に発表されたので、コロナ禍でのソーシャルディスタンス。コロナ禍ではペアダンスや接触はよくないので、シングルダンスのほうがいいし。
2つめはLGBTへの偏見への反対。
BAD BUNNYの故郷のプエルトリコでトランス女性が差別から殺害される事件がおきたので、彼は特にこの歌でトランスへの差別に抗議したそうです。それもあって彼はビデオでも女装した。
3つめはジェンダーの壁をぶちやぶった。
このミュージックビデオでは、Bad Bunnyが女装してますよね。最後の方に出てくる女性達と中ほどで花をつけた顔が見えないキャラをのぞいて、すべての登場人物は彼がひとりで何役もこなしています。
最初の女性キャラは、真っ赤なラテックスのぴちぴちのボンデージっぽい服をきて真っ赤なリップを塗った小悪魔的なセクシーな女性。
次のバストが大きくて花柄みたいな服を着たロングヘアの女性キャラは、インスタによくいる外見をパーフェクトにして自撮りをしてるような女の子像だそうです。
緑の背景になったところに出てきたのはブラックの服を着て帽子をかぶったモード系の女性なんだそうですよ。
Bad Bunnyは自分が女装してジェンダーレスなキャラクターになり、男性らしくとか、女らしくとか、ジェンダーの壁を破ろうとしたと。
また自分が女を演じる事で女性側の気持ちにたとうとしたそうです。
4つめはセクハラや痴漢反対。
今回の歌は女性にセクハラするなという内容でもあるんだそうです。
女性がダンスを一人で踊りたがってる時に無理やり背後から抱きついて踊るな、それセクハラだぞって。そういうセクハラや痴漢をも批判してる。
5つめは女性差別や女性へのバイオレンスに反対。
次にビデオのグリーンの照明になったシーンの背景に注目。この部分です。
この後ろに書いてある文字は
「Ni Una Menos」。
これはラテンアメリカで女性殺人事件や女性への暴力事件や性暴力事件があるたびにおきる抗議デモで女性達が掲げるプラカードや横断幕に書かれたキャッチフレーズ。
これ以上犠牲者を一人でも出すな、ということです。
ラテンアメリカはもともと男尊女卑が根強いのですが、そのせいでDVが非常に多いです。DVにより死傷する事件も多い。5年ほど前からマチスタ(男尊女卑の男性)に対する批判が高まり、女性殺人や女性へのバイオレンス反対の大規模な抗議デモがおきています。
それについては以前何度かブログに書きました。こちらを見てください。これにさっきのBAD BUNNYのビデオにあったキャッチフレーズがでてくるんで。
最近は中南米では国際女性デーに毎年大規模デモがおきるようになりました。
実は過去にBAD BUNNYも国際女性デーの抗議デモで女性への差別やバイオレンスに反対しています。
だから今回の歌のミュージックビデオの背景にこのフェミニストや女性の抗議運動でよく掲げられるフレーズをBAD BUNNYがいれたんです。
この曲はBAD BUNNYが作詞作曲したんだけど、彼は女性の視点で書いたそうです。自分は男性なんだけど、男の声でyo perreo solaと歌うじゃなくて女性の声で歌いたかったと。だから最初は声だけコラボした女性の声で始まってるんです。
でも彼が女装した事について、同じプエルトリコ人で人気のレゲトン歌手のANUEL AAがディスって炎上しました。BAD BUNNYがドラアグクイーンの恰好をしてトランスを遊びものにしてると書いたんで。BUNNYの真意をわかってない。炎上して謝ったそうですが。
そして次のメッセージが、レゲトン界のマチスモ(男尊女卑)への抗議。
レゲトン界はもとからすごい男社会で、男目線の曲やビデオばかりでした。16年前にダディ・ヤンキーの「ガソリーナ」が世界で大流行してレゲトンが大ブレイクしたんだけど、その時代のレゲトンは歌詞もビデオもエロいのばかりでした。なかには放送禁止になるものもあったほど。
女性を性的モノ扱いしてる、と批判されたことは数知れず。
そのへんはいままで何回もこのブログで書いてるので、過去トピック見てください。たとえばこれとか。
しかもレゲトンにはぺレオみたいなエッチをイメージさせるダンスもあるし、レゲトンはエロいし下品だと嫌ってるラテンアメリカ人も結構います。若い子には人気だけど。ティーンエイジャーがフィエスタでぺレオ踊るから若くして妊娠しちゃう子がいるんだって(ぺレオ踊ってそののりでエッチしちゃうから)怒る大人もいるし、子供にレゲトン踊らせたくないという親も結構いる。
レゲトンキングダディ・ヤンキーは世界中で売れたので欧米等世界で売るためには女性差別や女性を性的モノ扱いした歌では成功しないし検閲に通らないから、POPな歌を歌い始めました。2012年の「LIMBO」くらいから。彼はレゲトン界の重鎮としてMALUMAとか若い世代の歌手にそういう点で説教することもありますけどね。
けどレゲトン界はあいかわらずマチスタが多いんですよね。MALUMAみたいにマチスタ(男尊女卑の男)と非難されたり放送禁止食らう人もいるし。
レゲトン歌手で女性の歌手はごくわずかです。
今は人気歌手の女性レゲトン歌手のKAROL GはANUEL AAの彼女だけど、彼女は母国のコロンビアでは女性という理由でずっと相手にされませんでした。
だからBAD BUNNYは同業の男社会のレゲトン界にがつんと食らわせたわけです。
最後のメッセージは、女性へのリスペクト。ビデオの最後に(今度は彼の女装ではない)女性達がたくさんでてきますよね。世界の女性達にこの曲を捧げたからです。
BAD BUNNYが今年のビルボード・ミュージック・アワードで受賞して歌った時にもメッセージを発しました。
そこでレゲトン界の女性の先駆者であるIVY QUEENと、ビデオでもコラボしてたNESIと一緒に「Yo Perreo sola」を歌ったパフォーマンスがこれ。
そのビルボードのアワードでのBAD BUNNYの受賞スピーチが感動的でした。
スペイン語のスピーチを和訳すると、
「この賞は世界中の女性達に捧げます。あなたたち女性なしには何も存在しえなかったのです。なにも、なにもです。音楽もレゲトンも存在しえなかった。だから男性達よ、マチスタ(男尊女卑)であることも、女性への暴力も性暴力振るうのももういいかげんやめろ。みんなでよりよき未来のために教育していきましょう」とスピーチしたんですよ。
私は生中継でこのビルボードのアワード見てたんだけど、このスピーチにめっちゃ感動しました。
まさかマチスタが多いラティーノ(ラテン男)で、しかも男社会で長年女性を性的モノ扱いするような歌や発言が多かったレゲトン歌手からこんな言動が出るとは。
彼みたいな世界で大人気のレゲトンのトップ歌手がこういう事を言うのは非常に影響力があります。若い男性に爆発的な人気だから。
日本の男性達もこのBAD BUNNYのメッセージ、よく聞いてくださいよ。
ハロウィンの仮装
BAD BUNNYは世界的に大人気なので、今年のアメリカ大陸ではBAD BUNNYのこの「Yo Perreo Sola」のミュージックビデオの真似をした仮装が多かったです。でもコロナ禍なのでパーティはないから、自分達で仮装してSNSに写真や動画UPしてるんですが。結構笑えました。
これはアメリカのラテン番組がこのMVをまねしたハロウィンの動画。さすがお金かかってる。
個人的にウケたのがコレ。
@nikki_jay11 Yo Perreo Sola 🤪🐰 @badbunhy ##badbunny ##conejomalo ##yoperreosola
♬ Yo Perreo Sola - Bad Bunny
いま私はコロナでDJ活動もイベントも休止中なんですけど、DJでこの曲絶対かけたいですね。。。