Life and Dance in Latino Style

ラテン音楽、スペイン語圏のラテン音楽とダンス。サルサ、レゲトン、バチャータ、メレンゲ等。中南米関連。ラテンファッション。スペイン語。その他の音楽関連

風営法の標的はペアダンスだった

警察庁風俗営業法のダンス規制に関するパブリックコメントへの結果が11月21日に公示されて、ダンスファンに大きな論議をよんでいます。


その警察庁の見解によると、

男女のペアダンス 
→ 「男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があ」るので、風営法の規制法対象。

ペアダンスではなく、しかもダンスフロアなどが広くて他の人と密着しない(など規定を順守してる)場合  
→ 規制の対象とはしてない

だそう。



その 「「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」等に対する意見の募集結果について」)に書いてある、警視庁見解を引用すると

「(社交ダンスに代表されるような)男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているダンスを客にさせる営業は、その性質上、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があり、4号営業として規制対象」

それは「男女間の享楽的雰囲気が過度にわたり、善良の風俗と清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあるから」
だそうです。

しかしヒップホップのダンススクールや盆踊りなどは、ペアダンスではないので風営法の規制対象の扱いをしていない。
がその場合も 「ダンスをさせるための営業所の部分の床面積がダンスの参加者数に比して著しく狭く、密集してダンスをさせるものなど、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるものについては、4号営業として規制対象となり得ます」

とのこと。

警察がどういう見解によって風営法で取り締まってるかが結構分かるので読んでみてください。
(パブリックコメントでみなさんの意見を募るといいながら、結果はこれかよって感じだけど)



つまり、警察の一番のターゲットは 男女ペアダンス ってことだよね。


サルサのような男女のペアダンスは対象よ、って警察が見解だしたってことだよね。

踊る場所がどこかっていうより、男女でペアでダンスするのが風俗上よろしくない、のを重視してるのが分かった…。

まあもともと風営法のダンス規制ができた理由が、終戦直後にダンスホールに売春婦が客引きに来ることへの対策だったから。その時代はダンスホールといえばペアダンスだったんでペアダンスがターゲットにされる理由はわかる。でも終戦から3年しかたってなくてまだ日本が焼野原でみんなが飢えていたんだから、生きるために売春せざるをえない女性たちがいたのはしかたがない時代。
それから64年もたつのに、なぜいまだに昭和23年と同じ考えなのかね~。
なんで何回改正論議が出てもそこまで固執するのか、それを今度は明言してほしいです!!
(だいたいライブハウスやクラブに警官多数を動員して手入れしてる余裕があったら、ストーカーや性犯罪を取り締まるなどほかにもっとやることあるでしょうが…。)


早稲田大学の法学部の准教授でサルサ歌手としてライブもやってる岩村健二郎さんが、twitterでこの警視庁見解についてこうつぶやいてました。( https://twitter.com/Quenchan

パブコメ回答が出た。「ペアダンス新法」とも言える法解釈。明文化されていなかった4号営業除外のダンス教授種別を、「盆踊り」「ヒップホップ」という現行風俗の言葉を文に挙げて切り分けた。サルサがターゲット以外何が考えられるだろうか。大変なことになった。
★同時にペアダンスのサルサは「風俗上の問題」を想定されることになったのが今回の法改正だ。なんということだ。
★もともと風営法はダンスに対しそういう解釈だが、現行のダンス種を名指して言った意味は重い。日本において現時点での歴史的解釈が、ペアダンスをそのように認識した、ということだ。なんということだ
★いずれにしても今回のパブコメ回答の意味は重い。風営法は裁量行政だろう。本来変わりやすい街間の風俗に対応するべくそうなってるんじゃないのか。なのにいまさら「ペアダンス」が「過度に享楽的」なんて、「ペアダンス」それ自体の同時代的解釈をまったくせず、最初の条文の意味内容を継承した。
風営法4号営業、資格ダンス講師除外についての改正案、官報に出て今日から(注:11月21日)施行だそうだ。今日からだ。道は長いが危機は目の前というか、とっくに危機だ。
★ああ、腹が立つ。98年の改正からは14年ぶりの四号除外規定の改正。
パブコメ回答出て、今日(11月21日)から施行されました。サルサとしては大変なことになりました。





欧米では、高校のプロム(卒業パーティ)でドレス着てペアでソシアルダンス踊る慣例があったり、(欧州の)社交界デビューの舞踏会とか、クリスマスや結婚式などのパーティではペアダンスが基本。ペアダンスの相手を連れていかなきゃいけないから、恋人いない人や独身者はパーティのために必死で相手探す。
ラテンアメリカでも成人式や結婚披露宴やクリスマスパーティなどではペアでダンス踊ります。

でも日本ではペアダンスは不純異性交遊扱いなのね…。
舞踏会に行って王子様とダンスしたシンデレラも、日本の風営法では風俗を乱した者扱いですかね。
世界に知られたら笑いものだヨ…。
っていうか、もうこうなったら世界に知らせて笑いものにしてやったほうがいいかもしれない。
英語語とスペイン語なら私分かるから、世界に拡散しちゃいましょうかね。。。


サルサファンのなかにはいまだに風営法のダンス規制撤廃運動に反感抱いてたり懐疑的な人が結構いるようですし、私がこのような風営法ダンス規制反対のトピックを書くとあげあしとってくる人がいます。
でももうペアダンスが標的ってはっきりいわれちゃったし、ペアダンスのなかでも社交やフォークダンスよりラテンのほうがつっこみどころが多そうなので、踊る場所がクラブじゃなければいいとか、時間が深夜か早いかとか、有料イベントかどうかっていう問題じゃないみたい。

ダンス教師が社交ダンスみたいに公安委員会管理の団体が認定した教師のみとなり公安の監視下におかれるようになれば、日本語が読めないキューバ人やコロンビア人の先生や、大きな団体に所属してない先生はレッスンができなくなるんじゃないか、認定教師がいるダンス教室のみでしかサルサが踊れなくなるんじゃないか、という不安があります。(社交ダンスも認定教師のダンス教室のみ認められたけど、ダンスホールやクラブなどはまだ風営法上認められてないそうです)。
岩村先生がおっしゃるようにサルサは危機に直面してるのかも。



風営法によるダンスの取り締まりは私が知ってる範囲内で、もう10数年前からやってます。かなりのクラブやバーが警察の手入れなどで閉鎖させられました。
特に東京のクラブの取り締まりは、1999年~2000年あたりから厳しくなりました。その次は2005年から2006年くらいに一度激化。それから3年前。そして今。
(石原さんが都知事だった時代から)



※テクノやヒップホップなどのクラブ系には自分たちのはペアダンスじゃないからこれでもう風営法上大丈夫だと喜んでる人もいるけど、クラブとかイベントでは人が密集してるし、クラブは照明が暗くてフロアがせまいところが多い、深夜営業などの点があるから取り締まられてるわけなんで喜ぶのは早いでしょう。
今回の改正はどっちかというと小学生へのダンス教育義務化や子供のヒップホップ教室流行はどうなんだって批判されないための対策だと思います。
私はテクノなどのクラバーだったけど、行ってたクラブやイベントの多くが強制的にクローズさせられて今はもうありません。広大な公園でひっそりやってたゲリラ的な無料イベントも警察に中止させられましたよ



「ダンス」が風営法から削除されないかぎり、ダンスイベントやクラブなどへのダンス弾圧は続くと思います



※ 今取り締まられてるのは踊るクラブだけではありません。
ライブハウスもかなり閉店させられてます。
また新宿二丁目のゲイバー(クラブ)、ストリップ劇場、ソープランド、ホステスバーなど次々と取り締まりが入っています。



※ペアダンスは風俗を害するダンスではない!、サルサは明るいんだ、健全なんだ!!、って 風営法のダンス規制法に反対するサルサ団体やインストラクターたちは表だって主張しています。



しかしその努力をはばむものがあります
それは…
サルサに女めあてで行ってる一部の人たちが存在すること。踊るときにセクハラしたり、「あのクラブはババアばかりだが、むこうのイベントは若くてかわいい子がいた」、女をお持ち帰りした、などと言ったりネットに書き込んでる人たち。
そんなことしつづけてると、やっぱりサルサは「男女間の享楽的雰囲気が過度」って太鼓判押されてしまいます。
セクハラするのは電車の痴漢と同じ。本気でサルサ好きな人たちに迷惑だし、やっぱ享楽的な雰囲気のダンスじゃんとつっこまれちゃいます。


※そういえば以前ネットで、警察の人が風営法でディスコはOKなのにクラブはなぜダメなのかについて、 ディスコは一人で踊ることが多い(お互いくっつかない)けど クラブは男女ペアで踊ることが多いから、と言ってた…というのを読みました。
えー、テクノは一人でストイックに踊ってる人がほとんどですけどね~。


※ヒップホップ教室はOKということだけど、スペイン語版ヒップホップのレゲトンはどうなの?
ダンススクールのレッスンはいいけど、クラブでレゲトン踊ったらまずいってこと…? ラテンではレゲトンはペアで踊るから




●11月27日の朝日新聞の朝刊に「社交ダンスもサルサも風営法規制 」 という記事が掲載されました。
六本木にあった老舗のサルサバー サルサSUDADAの閉店、上記の早稲田大学の先生でサルサシンガーの岩村先生の話、ジャパンサルサコングレスやサルサイベントにも風営法の話にきている斎藤弁護士(風営法のダンス規制反対のLet's dance委員会運動の弁護士)、海の家でのビーチダンスイベントの風営法取り締まり、公民館の社交ダンスサークルへの貸し出しを市役所が自粛した、という話などが載ってます。

●日本最大のサルサ団体 サルサホットラインの風営法のダンス規制反対のサイトは
「サルサホットライン ダンス規制法(風営法)改正の署名活動 活動報告サイト」
今回の警視庁のパブコメ回答への反応として
「風営法ダンス規制の改正について」
サルサホットラインには、サルサを愛する弁護士さんでこの風営法問題にかかわってる方がいます。
サルサ風営法の関連については、サルサホットラインのサイトを見たほうがいいでしょう。

※salsa 120%という有名フリーペーパーでは、上記の早稲田の岩村先生がサルサ風営法についてエッセーを連載しています。



<ブログ内関連過去記事>
「サルサのどこが善良な風俗を害するペアダンスなの? 」
「ダンスはいくら弾圧しても死なない」
「サルサバーが閉まっていく 」
「ダンスは善良な風俗を害するもの
「ダンス全般が風営法対象だって。公民館さえ」
「ビーチサルサの危機」
「閑散…クラブではNo dancing」
「クラブの取り締まりに対抗するには」
「あのクラブまでもがクローズ!」

2006年に私が書いたクラブ取り締まりに対する過去記事
「クラブ消滅の危機」
「六本木のクラブ、閉鎖」