NYのプエルトリコ系ラッパーが「ニガー」という言葉を使うわけを調べてみた
ネットに、NYのプエルトリコ人のヒップホッパー(ラッパー)がNIGGERという言葉をよく使うという話がありました。
自分の事を「NIGGER」よび、友達に対しても「NIGGER」とよびかける。
しかも友達が日本人でも。
プエルトリコ人以外でも、米のラティーノは「NIGGER」という言葉をよく使うとのことでした。
「NIGGER」という言葉は、英語では黒人差別用語ですよね。放送禁止用語。
そのプエルトリコ人のラッパーたちは見た目に黒人じゃないのに、なぜ「NIGGER」を使うのだろう?
と不思議に思いました。
プエルトリコはラテンアメリカ。
プエルトリコはレゲトンとサルサの島なので、私もプエルトリコに滞在しました。
でも私が滞在した時は「NIGGER」という言葉をプエルトリコ人がいうのを耳にしたことはなかった。
プエルトリコ人の友達も何人かいるけど、彼らからもきいたことないです。
日本には米軍基地の米兵(マリン)にラティーノが多くて、ラテンのクラブにきます。
プエルトリコ人は、メキシカンやドミニカ人などいろんなラティーノがいるけど、「NIGGER」と彼らが言うのはきいたことがない。
ラテンの歌手には、プエルトリコ系が多くて、サルサの有名歌手、ハウスのアーティスト、レゲトンの歌手、いろいろいますが、彼らが「NIGGER」というのもきいたことがない。
スペイン語で黒人は「NEGRO」(女性は「NEGRA」)です。
スペイン語のネグロは差別用語じゃなくて普通に使われます。
あだなにもなるし、友達や家族に親しみを込めてよびかけにも使います。
知らない人にいきなりいう事はあまりないけど(正式にはafloを使うと思う。黒人のコロンビア人ならアフロ・コロンビアーノとか)。
けどその米に住んでるプエルトリコ人やラティーノは、スペイン語じゃなくて英語の「NIGGER」を呼びかけに使うという。
そこが興味深いと思いました。
私は英語もスペイン語もどちらも話せます。
なぜNYのプエルトリコ系やラティーノのラッパーが「NIGGER」と使うのか気になったので、プエルトリコ人の友達にきいてみました。
ちなみにプエルトリコはカリブにあり、米から一番近い島がキューバで、その隣がドミニカ共和国で、その隣がプエルトリコ。
前は独立国でしたが、スペインの植民地になり、その後米西戦争でスペインが負けたので100年以上前から米領土になりました。
今は米領で、首長はトランプ大統領です。
NYのプエルトリコ人はNUYORICAN(ニューヨリカン)といわれてます。
去年の秋にハリケーンに襲われて、壊滅的被害を受けました。
米本国に自己責任と見捨てられて、いまだに復興できてません。
私のプエルトリコ人の友達にニガーの件についてスペイン語で質問してみました。
今回私がこの件について質問したプエルトリコ人の友達は二人とも、プエルトリコ生まれのプエルトリコ人。首都サンファンに住んでました。でも去年プエルトリコを襲ったハリケーンで被災して、アメリカに避難した人達です。
今はアメリカのNY在住。
1人目が30代半ばの女性。
もう一人は20代の男性です。
●30代半ばの女性
プエルトリコに家族で住んでいたが、去年ハリケーンで被災しアメリカに移住した。
英語は話せない。
今はNYのプエルトリコ人が多いコミュニティに住んでいる。
彼女の話。
「プエルトリコではNIGGAはよく使われる言葉で攻撃的ではない。
言葉の口調やTPOや使う相手にもよるが。
普通は男友達同士で使うスラング。
あだなやよびかけとして使ったりする。
けど相手を攻撃する口調だと侮辱になるしけんかに使う。
NIGGAは非常にFEAな(汚い)言葉。
そういう言葉を使う子達はちょっとクレージー。
アメリカの文化好きで米の文化をコピーしてる。
この「NIGGA」という言葉もアメリカのヒップホップ音楽のマネが流行語みたいになった。
プエルトリコでは流行語だけど、他の場所に行った時にはトラブルになることもある。
ただし、米については、自分は英語が話せないし米生活が短いのでよくわからない。
●20代の男性
以前は米軍で働いていた。
英語も話せる。英語とスペイン語。
プエルトリコでは別の仕事をしていたが、去年ハリケーンで被災したので9月に米に避難して、今は米のNYに住んでいる。
「NIGGA」はよく使われるが、「NIGGER」は差別用語なので使われない。
プエルトリコではNIGGAもNIGGERも普通使わない。
でも米生まれのプエルトリコ人の間では「NIGGA」はよく使われてる。
でも「NIGGER」は使わない。
「NIGGA」ならわかるが、「NIGGER」をなぜそのラッパーが使ったのか。
友達に言ったのだから、たぶんジョークで言ったんだと思うが。
でもなぜ彼が、NIGGAじゃなくて「NIGGER」という言葉を使ったのか自分にはわからない。
たぶん、ヒップホッパーだからだろうけど。
NIGGERは黒人への差別用語。
NiggaとNIGGERはぜんぜん違う。
Nigga は友達同士の呼びかけ。
でもNIGGER は差別用語で、相手を侮辱する時に使う。
プエルトリコでは「NIGGER」はラッパーでも使わない。
特に他の人種の人には言わない。
ラティーノ(ラテンアメリカ人、ラテンアメリカ系)にはヒップホップは人気のジャンルだ。
ヒップホップのラッパーには黒人が多い。
ヒップホップの曲の歌詞には「ニガー」とか、黒人が黒人に対して使う言葉がよくでてくる。
でも
「NIGGER」じゃなくて、「NIGGA」ならポピュラーな言葉だ。
「NIGGA」は「NIGGER」からでた派生形ではあるが、プエルトリコ人にとってはニュアンスが全然違う。
「NIGGA」にはネガティブな場合とポジティブな場合がある。
ポジティブなのは友達に対してniggaとよびかけるとき。それはbroやbuddyという意味。親しい友達のよびかけ。
でもネガティブな場合は、相手を侮辱したり、人種差別する時だ。
ヒップホップの歌詞ではよく見る。
2PACなど昔のヒップホップの歌詞にもたくさん出てくる。
ラテンアメリカでもアメリカ音楽は人気なので、ヒップホップ音楽の影響も強い。
アメリカのラッパーが「ニガー」という言葉を、世界でポピュラーにした。
プエルトリコ人には島生まれと米生まれがいる。
アメリカ生まれのラティーノには、そういうヒップホップの言葉をよく使う人達が多い。特にNY生まれのラティーノ達には。
プエルトリコ系だけじゃなくて、メキシコ人やドミニカ人など他のラティーノもだ。
アジア人や他の人種でも米生まれなら、そういう言葉を使う人達もいる。
けど、そういう言葉を使う人は主に庶民でストリート系の人だ。
ストリートにたむろって、他のグループにちょっかいだしたり、けんかしたり、チーム作ったりしてるような連中。
だが、プエルトリコの島の方ではそういう米のヒップホッパーの用語はほぼ使われてない。
プエルトリコはスペイン語圏。
英語を話せるプエルトリコ人は少ない。
だからヒップホップを英語の歌詞をわからずにメロディだけ聞いてる人が多いからだ。
アメリカの英語のヒップホップをきいて、有名なラッパーのマネをしたり、歌やファッションのコピーをしたり。
クールだ、かっこいいと思う事をマネしてみるのは、少年ならよくあることだよね。
子供や少年にはヒップホップの影響は大きい。
自分が子供の時は、いとこのニューヨリカンをかっこいいとあこがれて彼らのマネをしてた。
アメリカのヒップホップカルチャーやファッションをかっこいいと思ったプエルトリコ人の子供はマネする。
上の世代の人達だって昔のラッパーたちのマネをしてたわけだし。
憧れの人の喋り方や言葉を真似したりするでしう。
しかし、ラテン音楽のレゲトンの方は違う。
レゲトンの歌手は「NIGGA」という言葉を使わない。
レゲトン歌手はプエルトリコ生まれでスペイン語の話者。英語を話せる人はほとんどいないから。
有名なレゲトン歌手のNicky JamやDe La Ghettoはアメリカ生まれだが、子供の時にプエルトリコに引っ越してプエルトリコ育ちだ。
だから彼らもアメリカのヒップホッパーの言葉は使わない。
プエルトリコ系の米人の有名人は多い。
でも彼らはNIGGAという言葉を使わない。
プライベートでは使ってる人がいるのかもしれないが、公では口にしない。
サルサの歌手もプエルトリコ人が多いが、サルサ界の人もNIGGAは使わない。
NIGGAはヒップホップの言葉だから。
プエルトリコは先住民族(タイノ族など)の国だったが、スペインに植民地にされ、アフリカから黒人奴隷が連れてこられた。
だから先住民族とスペイン人(白人)と黒人、そしてその混血が多い。
特に沿岸部は黒人系が多い。
一見白人に見えても、実は黒人の血が混ざってるムラートの人も多い (ムラートは黒人と白人の混血)。
ただし、プエルトリコ人や米のプエルトリコ系にも、人種差別主義者はいる。
プエルトリコ人の黒人系には差別意識はない。
でもアメリカの黒人を嫌ってる人はいる。
だからアメリカの黒人に対して「ニガー」という言葉を人種差別として言うやつらもいる。
つまり、「NIGGA」は、男友達同士で親しみを込めてあいさつで使う言葉。
でもプエルトリコの島ではあまり使われてなくて、米在住者が使ってる。
だけど、「NIGGER」は黒人差別の言葉。
語源は同じだけど、NIGGAはそこがNIGGERとは違う。」
という話でした。
以上が、米に住むプエルトリコ人の友達にスペイン語でインタビューしてみた話です。