Life and Dance in Latino Style

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farruko「Don't Let Go」がトランプの移民政策批判。歌詞和訳

1週間前に公開されたレゲトンシンガーのFarrukoの新曲「Don't Let Go」のミュージックビデオ。
ビデオはアメリカのトランプ大統領の移民政策を真っ向から批判したものだったので、いま話題になっています。


まずはそのミュージックビデオを見てください



Farruko 「Don't Let Go」






歌の歌詞はロマンチックだからミュージックビデオがなければ、これはロマンチックなトラップの歌だと思うでしょう。


でもビデオは違いますよね。

ビデオはトランプのメキシコ移民と不法移民に対するスピーチで始まります。
(トランプの声じゃないような気もしますが、トランプの有名なスピーチ)



ビデオの映像を説明します。



アメリカの静かな住宅街。
アメリカとメキシコの国旗が掲げてある家から出てくる男性(Farrukoが演じてる役)。
彼女(恋人)が買い物から帰ってくるところ。

アメリカの地方の大農場で働く人々(移民)たち。
不法移民を捕まえる警察隊が装甲車(移民追放部隊と書かれている)で町に到着。
レーダーに不法移民がいる家が映し出される。
武装した警官隊が民家にやってきて「警察だ。ドアを開けろ」と叫んで強行突入。
驚いて床に倒れ泣き叫ぶ女性。
手錠をかけて連行される男性。
道を歩いていたら警官隊に取り囲まれて捕まった男性。
家の前にいた女性も取り押さえられて連行された。
「ハンティングして、捕まえて、追放しろ」と書かれた護送車に入れられる移民たち。
メキシコとアメリカの国境沿いの風景。

買い物袋を持って楽しそうに帰ってきている彼女。
しかし家の近くで彼女は警官隊につかまってしまう。
farrukoがあわてて彼女を助けようとして彼女の手をとるが、
彼女は警官隊にひきずられていってしまう。
彼女は護送車に乗せられる
移民の収容施設に送られてしまう。
目の前で彼女を連行されてうしひしがれる彼氏(Farruko)。
彼女との楽しかった思い出にひたる。

不法移民の収容施設で落ち込でいる彼女。
収容された移民に面会にきた家族たちが涙する。ひきさかれた家族。
メキシコに強制送還された移民たち。
その中に彼女もいる。
変装したFarrukoが金網越しに彼女の手を触る。
国境の柵越しに見つめ合う二人。
国境警備隊ともみあう人々。
Farrukoが国境警備隊(米)の車両に火炎ビンを投げる。
Farrukoは一人で去っていく






ビデオでは二人の家にアメリカとメキシコの国旗があり彼女だけが強制送還されたので、アメリカ人とメキシコ人のカップルのストーリーだと思います。
ビデオの移民を捕まえる部隊が、ナチスゲシュタポユダヤ人狩りしたのに似てる。




このビデオは3つのパートに分かれていて

トランプのスピーチで始まり、歌の本編があって、最後に移民政策や人種差別反対のメッセージが流れます。


この3つのパートをそれぞれ翻訳します。

①最初のスピーチが英語で字幕がスペイン語
それから字幕のない英語のスピーチ。
→ ここは英語から和訳します。


②歌の本編
→ スペイン語から和訳します


③最後のfarrukoのメッセージ
→ スペイン語から和訳します


   ⇩  ⇩  ⇩



ビデオの最初と最後の部分の和訳です。







<トランプの演説パート>

メキシコは優秀な人材をアメリカに送ってるわけじゃない。
犯罪者やレイプ犯をアメリカに送り込みアメリカで犯罪をおこしている

アメリカ国民の多くが移民に仕事をとられている

私の移民政策について説明しよう
不法移民を全部排除しはじめる
移民取締りの警官隊を強化し、新しい移民政策を施行するのだ
私が大統領になったら不法移民はみなこの国から追放されるだろう

(USA, USA, USA と歓喜して叫ぶ支持者たち)

メキシコとの国境に(万里の長城のような)壁を築こうではないか!




<トランプの移民政策に対する批判メッセージ>


アメリカは移民の国である
移民たちはアメリカンドリームを求めてアメリカにやってきた
しかし日に日に移民排斥が強くなり、多くの家族がひきさかれている
人種差別によってヘイトすべきではない

みんな団結しよう!






以上、歌の歌詞に加えてビデオに出てくるスピーチと最後のメッセージまで翻訳しました。

でも歌詞の和訳は別ブログに移動しました。
こちらをクリックしてください。

http://diafeliz.jugem.jp/?eid=15



farrukoがインタビューで、この歌はロマンチックなのにビデオが政治的で歌の内容と違うんではという質問に対して答えてました。
この歌は、ほんとは違うミュージックビデオにする予定だったそうです。愛し合ってるカップルがいたんだけど、事故で片方がなくなるとか、火事にあって2人が焼死するとかそんな内容。

だけどトランプの移民政策で自分と同じラティーノ達(ラテンアメリカ系)が大変な目にあってる現在の状況をうけて、移民政策に反対するビデオにしたそうです。


でもこのビデオを見たラティーノの一般人からは賛否両論のようです。
Farrukoは不法移民を助けようと思ってるのか、違法なやつらだろとか、
プエルトリコには移民政策は関係ないのになぜプエルトリコ人のFarrukoが口出しするのかとか批判もあります。


プエルトリコは、キューバドミニカ共和国の隣のカリブの島国だったのですが、アメリカの領土になってしまいました。

私がプエルトリコに行ったときは、空港に「Welcome To USA」と大きく書かれていたし、入国にはアメリカのESTAが必要だったし、貨幣は米ドル。プエルトリコに来ている観光客の大半がアメリカ人でした。

米の領土で自治連邦区であり、米の憲法下にありますが、プエルトリコが経済危機になったときは米は助けませんでした。
今日野球のWBCの決勝で アメリカ VS プエルトリコ の試合がありましたが、プエルトリコは国ではありません。
アメリカ VS アメリカの自治領。
でもアメリカのプエルトリコ系はプエルトリコを応援してましたね。
ラテン界の有名人たちも、自分はボリクア(プエルトリコ人)というし。

アメリカにはプエルトリコ系は多いし、プエルトリコ移民がNYでサルサを生み出しました。
ラテン界のスター、マーク・アンソニージェニファー・ロペスプエルトリコアメリカ人です(2世)。

だから、プエルトリコは米領なのに、なんでプエルトリコ人のFarrukoが不法移民について口出しするんだと批判があったわけです。

でも実際はトランプが大統領になってから、不法じゃないのに外見でとりしまわれたり差別されるケースが増えてます。

最近では、プエルトリコ系米人が捕まって不法移民として拘束された事件がありました。2世でアメリカ国籍も市民権も持ってるので何日かして釈放されましたが。

あるメキシコ系の女性は不法移民だとつかまって、グリーンカードがあったのにメキシコに強制送還されたそう。

「不法」じゃないのにつかまってる人がいるのは問題。



今までいろんなメキシコ人と話して私が感じたのは、米在住とメキシコ在住メキシコ人の間に温度差があること。
米のメキシコ人にメキシコの話をすると、自分は二世だしメキシコには興味がないと嫌がられることもありました。
逆にメキシコに住んでるメキシコ人には、「メキシコで学歴がなくていい仕事にありつけない貧乏人がアメリカに出稼ぎに行く。メキシコでいい仕事がある人はアメリカなんかに行く必要はない」と言ってる人達もいました。


あとアメリカではカリフォルニア州アリゾナなどにメキシコ人が多すぎるとかいわれてますが、もともとカリフォルニアもアリゾナもテキサスもフロリダもネバダもメキシコ領土だったんです。
だからメキシコのスペイン語の地名がついてるし(Los Angeles, San Diego, San Antonioなど)、メキシコ系が多い。

だからトランプがメキシコ国境に壁を築くといったら、メキシコのメキシコ人たちが「壁の建設いいよ。でももともとの国境線にな」と言ってました。
つまり、メキシコの元領土のところでの国境線。

muro de mexico




それはともかく、
Farrukoは自分の意見をはっきり言う人じゃないかと私は思います。論争になってることについてよく意見してるんで。
Malumaの「Cuatro Babys」が女性蔑視だと大批判されたときにmalumaを擁護してたのはFarrukoでした。



この曲とビデオは、2010年にリリースされたWisin Y Yandelの「Estoy Enamorado」に似てますね。
あれは、アメリカのアリゾナ州が不法移民の取り締まり強化を目的に2010年に制定した移民法(SB1070)に反対した歌でした。
→ この歌については2010年に解説しました 
「"Estoy Enamorado”Wisin Y Yandel (SB1070 人種差別的移民法」  )

私はこっちの曲とビデオのほうが個人的に好き。


「Estoy Enamorado」 Wisin Y Yandel





Wisin Y Yandelは2人ともプエルトリコ人なんだけど。
Farrukoのときみたいにプエルトリコ人には関係ないだろとは当時批判されてなかったんですけどね。



じゃ逆に中南米が移民に対してとても優しいのかというとそうでもないと思いますけどね。

私がいた南米の国の場合、自分のIDカードができたから取りに来いといわれて移民局に行ったときには、こわいオフィサーから泣きそうになるくらい厳しく質問されました。
それから何ヶ月かたって移民局でビザの期限と更新について質問しに行ったら、「おまえはなぜそんな質問をするのか? もしかして不法滞在か偽装結婚でもたくらんでるのか。もしビザが1日でも切れたら強制送還になる」と係官に言われてびびりました。
いや、ただビザの期限について普通に質問しただけなのに。
法律も破ったことないし、この国にお金おとしてるだけのイイ存在じゃん。
不法移民になってまでこんな国にいたくなんかないわ って内心思いました (← もちろん言ってないよ 苦笑)。