Life and Dance in Latino Style

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コロンビア人がクラブに行くのは刹那的だから?

前回コロンビアが世界で一番国民の幸福感の高い国というトピックを書いたら ( 「幸福度が高い国コロンビア」)、コロンビアが幸福なわけがないし危険国だから刹那的なだけなんだろうなどと言ってる日本人達がいることにショックを受けたというコメントがコロンビア在住の日本人の方からありました。

※ 注: この記事は2013年に書いた記事で、2012年以前の状況を書いています。最新情報ではありません


で、AFP通信(世界の大手通信社)が制作したコロンビアについての番組を紹介します(日本語字幕)。

「コロンビア、パーティの持つ意味と役割」という1分半の短いビデオ。
(実際はパーティじゃなくて、クラブだけど)




コロンビアは危険な国で明日死ぬかもしれないから週末にクラブに行って生(生きていること)を楽しむんだ、コロンビア人達はみんな刹那的に生きている、という内容。

まさにこれは最初に引用した、「コロンビアの幸福度が高いわけがない、コロンビアは危険だから刹那的になってるんだろう」、っていうの、そのままですね。


うーん、でも実際はそんなに心配しながらクラブに行ってるコロンビア人は私は見たことないです。


上のAP通信のビデオでは、コロンビアは世界で一番殺人と誘拐率の高い国だってビデオで言ってる。

← 殺人率が世界で一番高いのはコロンビアっていうのは違いますね。
中南米で一番危ないのは、ホンジュラスです。
ホンジュラスは世界で一番殺人率が高くなりました。
(でも今一番人が死んでるのはシリアだと思うんだけど、殺人率ランキングには紛争地域は入らないようです)。

2009年の世界の殺人率では、11位と12位あたりにはコロンビアのメデジンとカリが入ってます。
でもカリやメデジンを歩いていて、そのへんに死体が転がってるとか、銃撃戦や人が撃たれるのを目のあたりにするなんてことはなかったです。
マフィア抗争が多いので殺人率高いけど、マフィア抗争は一般人にはあんま関係ないからだそうです。


この番組では、コロンビアは世界一殺人率と誘拐発生率が高い国だから生きることに尊さが生まれる、と前置きをして、クラブで女性へインタビューしその女性が「一秒一分たりと無駄にはできません。明日はここにいられるかわからないんですから」という字幕が出ています。

でも、日本語の字幕じゃなくてスペイン語のほうをきいてみると「一秒一秒でも有効に使わなきゃ、だって今日みたいにここでまた遊べるかどうかわからないんだから」と彼女は言ってると思います。英語の吹き替えの音が大きすぎて、スペイン語がよく聞こえないんだけどたぶんそう言ってるような。
コロンビアは危険で明日死ぬかもしれないから今日一秒でも大事にして生を楽しむんだと番組ではとらえてるみたいだけど、違うじゃないかと私は思うんですけど。
たぶんこの人は今度いつクラブに遊びに来れるかわからないから、一秒たりとも無駄にせずに今日思い切り楽しみたいって言ってるのでは? 主婦であんまり夜遊びできないとか、クラブはお金がかかるからあんまりクラブに来る機会がないからじゃないかという気がします(コロンビアはクラブが高いから、クラブはときどきしか来れない人が結構いる)。
もう少し深い意味だったら、人生はなにがおきるかわからないから(例えば明日事故があるとか万国共通の話で)一瞬一瞬大事に生きようっていう意味ともとらえられるかもしれない!?


53秒目からでてくるクラブは、コロンビアの首都のボゴタのクラブです。

ここでインタビューされてる金髪の女性ファラさん。
彼女は自分の出身地の村が民兵組織に生活をおびやかされていて爆弾や村の破壊で多くの人が死んだ。今はボゴタで働いていているが緊張感がとれない。でもリラックスするためにクラブに踊りに来てるんだ、と言っています。

このファラさんっていう女性の出身地は、たぶん山間部とかのゲリラがいるエリアじゃないかと思います。
コロンビアは山が多い国で、山間部などにゲリラがいるところがあります。
政府の麻薬カルテルやゲリラ壊滅作戦をおしすすめ、ゲリラとの和平交渉もすすめようとしています。
でもゲリラはいるので、ゲリラがいる地帯には決して行かないでください。コロンビアで国内移動するときは、なるべくバス移動ではなくて飛行機で移動することをおすすめします。私はコロンビアの国内移動は全部飛行機使ってます。

コロンビアがゲリラとテロの国っていうのは本当で、まだゲリラもテロも存在しています。
2012年の5月にもボゴタの中心部で爆破テロがあり、元大臣が狙われて爆破に巻き込まれた市民に多数の死傷者が出ました。

でもそんなゲリラがいるエリアの出身者にわざわざクラブでインタビューさせるところに、この番組の作為がみえるような気も…。



そして番組の最後は、「クラブに来ているコロンビア人の目標は来週までサバイバルすることである」、っていうのが結論。



でも実際、ボゴタのクラブに遊びに来ているコロンビア人達がみんな、危険だから来週まで生きてるかどうかわからないって心配しながら踊ってるわけじゃないですよ。
私はボゴタのクラブにも行きましたが、みんな普通に週末を楽しんでました。


この番組をコロンビア在住者やコロンビア人、コロンビアに行ったことがある日本人が見たらたぶん怒るだろうな。
日本のテレビ局(ミヤネ屋)が放映した「コロンビアは世界有数の危険国」という特集も、コロンビア在住日本人から反論たくさんでてましたが、それよりこっちのAP通信のほうが反論よびそうです。

コロンビアは危険国で人が刹那的に生きているというイメージが先行して、最初にストーリーを英語圏の制作者が作って、そのストーリーに合うようなコロンビア人を探して取材したりコロンビア人のインタビューをうまくカットしてあてはめたような感じもする。
まあそういうのはテレビもよく使う手法だけど。

このyou tubeビデオのコメント欄には日本人のコメントが多かったです。
こういうビデオやネット情報をみて「コロンビアってやっぱ世界一の危険国なんだ」っていうイメージが世界中に広がってしまうんだろうな…と思いました。


でもそれが世界中のコロンビアのイメージですよね。
麻薬とゲリラの危険国。
そのイメージがあるので、コロンビア人は観光ビザなしで行ける国が少ないし、空港で「おまえヤクの運び屋だろう」と入国審査官に言われて足止めされたりすることがある、とコロンビア人達がよく嘆いています。

私もコロンビアから別の中南米の国に行ったときは、スーツケースを空港であけられ荷物一つ一つチェックされて、お土産のコロンビアのコーヒーさえ「この粉はコロンビアから持ってきたコカインだろう」って詰問されました。

コロンビアに行った旅行者には、コロンビアは危険国だからとみがまえていったのに思ったほどでもなかったと感想いう人が多いし、欧米人中心に観光客もだんだん増えてました。

けど

私はコロンビアのいいところも悪いところも知ってるから、悪い面も書きます。

「コロンビアは安全で気軽に旅行できる国ですよ~。観光旅行におすすめです」なんて言いません。
コロンビアに行ってみたいんだけど…と誰かにきかれたら、中南米渡航歴もなく現地に知り合いもいないならコロンビアはおすすめしない、と答えています。
コロンビアは地球の歩き方にもほとんど掲載されてないし、日本語の情報が少ないからです。


中南米は治安のいいエリアと治安の悪いエリアがはっきり分かれていて、治安がいいエリアにいればもっと安全だというのはいえてると思います。

けどコロンビアでは、「治安のいいお金持ちエリアにいれば大丈夫」、と言う人が結構いるけれど、私はそうは思いません。
たとえばボゴタでは北部の治安がいいエリアに宿泊するようにすすめられるし、安全情報にも書いてあります。特に日本大使館があるあたりとか。
しかし去年(2012年)のボゴタでの爆破テロは日本大使館の近くでした。日本人もいるボゴタ北部の中心街です。
私がボゴタで宿泊したところのそばでも数年前に爆破テロがあったとききましたが、そこも日本大使館から近かったです。

去年のテロでは元大臣が狙われたように、コロンビアでは元政治家や現政治家が一番テロの標的になりやすいので、政治家が多くメディアが集まってる首都のボゴタでは特にテロに注意したほうがいいんじゃないかと思います

第二の都市メデジンだって高級住宅街に元政治家などが住んでいます。
でも第三の都市カリは政治家の都市じゃないのでテロの心配はないとカリの人がいってました。

コロンビアに限らず他の国でも超高級住宅街は政治家や元政治家が住んでることが多いし、高級住宅街は金持ちが多いから空き巣や強盗にも狙われやすいので、貧困エリアよりも必ずしも治安がいいとはいえない、と私は感じました。
コロンビアの高級住宅街も貧困エリアも両方知ってるので。

他の方の治安情報や外務省の安全情報とは違うかもしれないけど…。
自分の経験からはそう感じました。

(コロンビアの治安情報や身を守る方法については、また後日書くつもりです。過去に書いた「コロンビアのカリの治安と注意事項」 や。「海外旅行で身を守るために」 も参考にしてください)。

私にとっては、コロンビアは中南米の中でも安全エリアと危険エリアの線引きや判断が難しい国です。
前もテロがある国に住んでたけど、テロがある国って自己防衛対策が難しいんですよね。
(メキシコも危険国と言われてるけど、米との国境地帯の麻薬抗争エリアなどの危険エリアと安全なエリアがもうすこし分かれてるので、私にはコロンビアよりは判断しやすいかな)


でもコロンビアで私は時間やエリアにもよりますが、一人で買い物したり遊びに行ったりもしてました。
コロンビアでは事件にあったことはに今まではないです。たんにラッキーだっただけなのかもしれませんが。
スペイン語できるから現地のニュースいつも見てるし、地元の人たちからそのエリアの治安情報については詳しくきいてます。この通りは何時まで歩けるかとかどこのエリアは入らないほうがいいかなどをまず教えてもらいます。地元の人が危険と言うことは決してしない、知らないところや夜に歩くときなどはコロンビア人の友達に付き添ってもらう、タクシーは知り合いのタクシードライバーに電話するか無線タクシーをよんでもらう、滞在先はセキュリティが住人の顔をチェックして住人しか敷地内に入れないところを選ぶ、などいろいろ気をつけていることもあるかと思います。


コロンビアの多くのクラブはセキュリティが厳しくて男女に分かれて身体検査されたり店内にも何人も警備がいます。メキシコとかもそうでした。それに慣れちゃうと、東京のクラブに行ったときエントランスでセキュリティチェックもなく入れるので、もしなにかおきたとき大丈夫かなときどき不安になります。東京のクラブやバーでは置き引きにあったことありますが、コロンビアではテーブルごとにグループで着席してテーブルに担当スタッフがつくので、自分の席に上着おいてても盗まれたことは今まではなかったです。



確かに治安に問題はあるけど、コロンビア人がクラブに行くのは、踊って楽しむためです。
ラテンアメリカではダンスやフィエスタが生活の一部で、週末は友達や恋人や家族と一緒にホームパーティやったりクラブに踊りに行く。
コロンビアはサルサの国ですしお祭り好きが多いから、クラブがたくさんあるしクラブカルチャーがすごい発達しています。
クラブが流行音楽の発信基地。
いい音楽聴いて、おいしいお酒を飲んで、仲間と一緒にわいわい踊る。

コロンビア人がクラブに行くのは、明日殺されるかもしれないから刹那的になってるからじゃなくて、もちろん友達や恋人たちと踊って楽しむためだと思います。


※ 注 : これは2011-2012年にコロンビアにいたあとに、2013年に書いた記事です。最新情報ではありません。

2016年に書いた 「コロンビアでの日本人殺害事件と安全対策」 を読んでください


ブログ内関連過去記事:
「コロンビアのカリと注意事項」
「海外旅行で身を守るために」
「コロンビアのカリに観光に行きたいと思ってる方へ」